五感の体験を通じて地域を多面的にみる~酒米パエリア実験!~

地域というコミュニティ | 2018.12.9

2018.12.9公開


社会問題や地域活動について催しを企画しても毎回同じ人がくる・・・。

イベント企画者なら、誰しもこの悩みを抱えたことがあるのではないでしょうか。

様々な視点を持ち寄って解決策を探すためにも、参加者の裾野を広げたい。

そんな課題意識へのアプローチとして「頭ではなく五感で問いを体験するワークショップ」、もっと平たく言うと「楽しい体験を楽しみながらいつの間にか問いについて考えているワークショップ」を試みています。
「何となく楽しそう」というところから広く多数の人を巻き込み、感覚を共有し、心に到達することができれば、自然と継続的に問いに関わるチームを作れるのではないか。

そんな意図をもって「地域と人をつなぐ問い」を扱ったアウトドア型ワークショップ「酒米×パエリア×???地域食材を掛け合わせて新しい郷土料理<和えりあ>をつくろう!」
本記事ではこの実験企画の概要と結果をまとめておきます。
多様な視点を交えた場を作りたい方や、地域と人をつなげる新しいアプローチに関心のある方などの参考になれば幸いです。

企画の概要

酒米×パエリアで地域と自分をつなげる

スペインの郷土料理パエリアはその土地の薪でおこした火を皆で囲み、その土地の食材を一つの鍋に入れ、焚き上げるという、まさに皆でつくるソウルフードです。
このイベントは、日本酒の原料である酒米をはじめとする日本のこだわり食材を使ってパエリアを皆で作ることで、それぞれの食材や地域に対して興味と尊敬を見出し、同じ感覚を共有する人々のつながりを育むイベントとして実施しました。

きっかけ

なぜパエリア?

バーベキューなどアウトドアの活動ではメンバーそれぞれの得意分野を生かして活動する流れが自然と生まれ、チームビルディングへの効果があるとして注目されています。
特にパエリアは一つの鍋の変化を見守ることができるという性質上、一体感を育みやすく、ワークショップに向いているコンテンツだと考えられます。
(完成品が非常に絵になる!というのも今の時代には重要ですよね)

また、そもそもが9世紀にスペインバレンシア地方で誕生し、山なら山の、海なら海の、その土地土地の旬の食材を使って作る伝統料理です。
土地へのこだわりは、薪も含めてその土地のものだけを使うのが本式と言われています。
そんな背景からも、地域に関するワークショップの舞台装置としてのポテンシャルは非情に高いと考えられます。

なぜ酒米?

パエリアを普通の日本のお米で作ると、スペイン米と比べて日本米は水分を多く吸いがちであるため、べちゃべちゃとしてしまいがちです。
一方で、山田錦をはじめとするといくつかの酒米は、スペイン米と似た性質(高アミロース)を持っておりパラパラっとした美味しいパエリアを作りやすいのです。

そして言わずもがなですが酒米は日本酒の原料。
日本を、それもちょっと粋な日本を感じさせる食材です。
そんな酒米で外来の郷土料理を作ってみる。
舶来文化を取り入れて自分たち好みの文化に再解釈していった日本らしくて、ちょっと粋な試みではないでしょうか!

…と調子に乗って誇張も交えましたが、「異なるものを掛け合わせることで少し軸をずらして素材を見つめ、日常得られぬ気づきを得てもらう」ことに挑戦しています。

パエリアと酒米を掛け合わせて何が起きる?

軸をずらして新しい目線で素材を見つめる機会と、実際に五感をフル活用して土地の素材を楽しむ機会。
パエリアづくりを通して良い感じに温まった多様性あるチームがその機会を得ることで、きっと新しい
そうすることで、きっと新しいアイデアが生まれる可能性を高められる筈!

筈…というわけで、もちろんまだ仮説です。
だから、検証しました!

当日の設計

会場

今回の会場は江東区東大島駅すぐの『SUISAI BASE』という場所で開催させていただきました。
SUI SAI BASE

心地の良い風と緑を楽しめる『川の駅』エリアに新たに生まれた文化・価値の発信拠点である『SUISAI BASE』。

  

川沿いで楽しめるバーベキュー
鳥取県大山直送のお野菜を使ったカフェ
ゆったりくつろげる足湯

…とコンテンツもワクワク尽くしの場所なのですが、何より惹かれたのはそのコンテンツを生み出すプロジェクトの自由でキラキラした雰囲気です。
様々な世代、場所からたくさんのメンバーが出会って、関わって、交じり合って、一つの場を作っている。
それ故に、どんな人が来ても笑顔になれる場所だと感じています。

そんな場所の力も借りて、様々な地域の食材やそれに惹かれるメンバーと出会って、関わって、交じり合う場を設計しました。

プログラム

イントロダクション~食材インスピレーショントーク&試食~使いたい食材でチームビルディング

今回の企画メンバーは色々な地域につながりのあるメンバーなので、それぞれ推し地域のこだわり食材を持ち寄りました。

(あまりにもこだわりすぎてプロジェクト予算を圧迫しそうになったのは秘密です。。。)

本当は生産者さんと参加者の皆さんをおつなぎして、生産者さんのこだわりを直接お伝えいただきたいところですが、今回は企画メンバーが応援したい生産者さんへの想いを込めて食材をプレゼンさせていただきました。

 

そして近くで香りを感じたりちょっと試食してみたり…と五感で食材に触れてから、パエリアに使ってみたい食材でチーム分けをしていただきました。(食材マグネットテーブル!)
「おいしい!」を共有した仲間同士でチームビルディングをしていただく形です。

パエリアづくり~実食

そして本題のパエリアづくり。
基本的なレシピを共有して、それぞれが選んだ食材の使い方などはチームごとに自由に取り組んでいただきました。
具材の投入順や火加減の調節、味の確認、美味しそうに見た目を整える・・・などなど、やりながら生まれてくるタスクを分担していく中で自然とチームの結束が生まれていきます。

 

途中で飲み二ケーション挟むも自由w

  

スタートから小一時間で、チームごとの個性が表れたパエリアが完成します。

自分のチームのパエリアは勿論、チームごとにおすそ分けして食べ比べを楽しんでいただきました。
「調味料が同じでもこんなに味が変わるんだ!」と皆さん驚かれていたのが印象的です。

対話「<食>や<地域>を掛け合わせてどんなことができる?」

感動冷めやらぬうちに、一緒に「おいしい」を作った仲間でこれからどんなことが作れるだろう?と妄想するお時間。
野外調理と対話のかけあわせは成り立つのか…?と少し不安もありましたが、パエリアワークという長いアイスブレイク?を経て良い感じに温まっているチームで、すんなりと対話に入っていく様子が観測されました。
調理工程で適度に疲れているのが対話に対する心理的ハードルを下げている、という効果もあったかもしれません。

 

「地域に押しかけパエリアをしに行きたい」
「地域の調味料をとりあげたイベントをしたい」
「海外の郷土料理のイベントをしたい」
「生産者さんのマーケティングをしたい」

・・・とチームごとに出た想いを共有して、イベントは終了しました。

実験結果検証

アンケート結果から検証

毎度のことながら母数が少ないのであくまで参考値になりますが、傾向を確認してみます。
ちなみに回答率は5割。。。アンケートはその場で依頼すべし!が大きな反省です。


「対話の質」への評価を図る二つの質問には、「1(非常にそう思う)」の割合が大きくなっています。
(比較対象:「聴く・感じる・つながる 」〜古民家×和楽器×対話〜

一方で低い評価も出ていることから、入り込める人とそうでない人が別れやすい設計であったかもしれません。
コンテンツとして詰め込みすぎたかな?と反省もあるので、この辺りは次回プログラム構成を調整しつつ評価が変わるかを見てみたいところです。

基本グループに委ねた構成でしたので、「対話の質に影響を与えた要素」としては「参加者の対話」が多く挙がります。
また、場の雰囲気や食材といった舞台装置もよい影響を与えていた、と一定数感じられているようです。

そして結局この体験を通してつながりやアイデアは生まれたのか?という問いには、上記通り「旅行」「食材の購入」といった形での次のつながりに意欲的な回答が得られました。
勿論実際に支出を伴う回答ではないのですが、ある程度選好が強まったという傾向は読み取れるのではないでしょうか。

参加者からのフィードバック

定量評価とは別にいただいたコメントからは、五感を使ったワークによってチーム内の安心安全が促進されていたことが推察されます。

とても安心できる場で、一度も不安に思ったり嫌な気持ちになることがなかった。
イベントの翌日って、充実感とモヤモヤ感がいつもあって、(初対面の人に言い過ぎちゃったかなぁとか、すごい人がいっぱいいて自分はイケてないなぁ)とか落ち込んだりするんだけど、今回は不思議とそれがなかった。

料理をみんなでするだけで、こんなに親近感がわくなんて、新たな発見だった。しかも、食材を選んだり、おおまかなレシピで調理の工夫ができたのがよかったのかも。全部決まってて料理教室みたいな感じだったら、きっと緊張した雰囲気になったと思う。

集まった皆様とてもステキな方ばかりで、知り合いがほとんどいない中でしたが気負いなく楽しく参加が出来ました。(チーム分けの人数もちょうどよかったと思います)

また、地域に対する新しい視点、つながりという狙いについてもポジティブなコメントをいただけました。

誰かにとってゆかりのある地域の食材を一緒に楽しく食べると、それまで知らなかった地域・土地が自分にとっても急に身近に感じられて、とても面白かったです。

今後の展望

実験結果の総括として、仮説に対して可能性は示しているものの、今後も検証を重ねる必要がある・・・といったところでしょうか。

例えば調理ワークの時間と対話の時間を分けずに重ねてみたり、日を分けてみたり、問いの抽象度を変えてみたり(例えば具体的な商品開発にしてみたり)
或いはパエリアワークではなく、同じように対話に良い影響を与えそうなものを掛け合わせてみたり。
多様な人を巻き込んで「地域を多面的にみる」ための実験を試みていきたいと思います!